金融研究 第36巻第4号 (2017年10月発行)

財政状況と長期金利

中村康治、八木智之

本稿では、経済協力開発機構(OECD)に加盟する23ヵ国の1980年から2013年までのパネル・データを用いて、財政状況などが名目長期金利に及ぼす影響について定量的な分析を行った。分析の結果、労働生産性や人口動態、インフレ率に加えて、財政収支や国民負担率、経常収支(=国内貯蓄)が名目長期金利に影響を及ぼすことがわかった。特に、財政収支については、将来の財政の持続性に影響すると考えられる政府債務残高の水準の高低によって、名目長期金利の弾性値が異なるとの結果が得られており、名目長期金利の財政収支に対する弾性値はこの変数に依存して非線形であることがわかった。また、国民負担率が低い場合は、将来の財政再建に対する期待から、長期金利が低位に抑えられるとの結果も得られた。このほか、近年では、非伝統的金融政策や安全資産への選好が、名目長期金利の押下げに寄与していることもわかった。

キーワード:長期金利、財政収支、債務残高、経常収支、国民負担率、財政再建、金融政策


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