証券会社や銀行など、金融商品の販売や仲介を行う金融機関と顧客との間の訴訟において争点になることが多い論点として、金融機関の顧客に対する「助言義務」違反がなかったかという点が挙げられるが、現状、「助言義務」の位置付けについては不明確な点も少なくない。その背景の1つとして、金融機関が顧客に対し、助言を提供する旨の契約に基づかず、自発的に提供する「単なる助言」と「助言義務」の関係が明確でないことが考えられる。
本稿では、説明義務や適合性原則の遵守義務など、金融機関に課される他の義務と「助言義務」との関係や、「助言義務」の根拠について整理したうえで、「単なる助言」と「助言義務」との関係を整理するための3つの方向性を提示する。そのうえで、近年、こうした点に関連する制度改革が行われた英国とドイツの制度を概観し、両国の制度がこうした3つの方向性のいずれに近いかといった観点から検討を加える。
キーワード:助言義務、説明義務、適合性原則の遵守義務、専門家責任、信認関係
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