金融研究 第35巻第3号 (2016年7月発行)

トレーディング取引のデフォルトリスク評価:簡素な内部モデルの構築と考察

守谷嘉洋

2012年5月にバーゼル銀行監督委員会から公表された市中協議文書「トレーディング勘定の抜本的見直し(Fundamental Review of the Trading Book: FRTB)」では、トレーディング取引のリスク・アセットの評価方法を包括的に見直している。現行規制では、内部モデル方式を採用している銀行であっても、デフォルトリスク評価について簡便な掛目方式(標準的方式)の適用が認められているが、FRTBではいくつかの要件を満たす内部モデルを構築することが求められる。その主な要件は、(1)2ファクター・モデルを採用すること、(2)参照先におけるデフォルトの相関について株価あるいはクレジット・スプレッド・データから推定すること、(3)流動性ホライズンは1年とすること等である。本稿では、デフォルトリスク評価に関するFRTBの要件やリスク管理の実務を踏まえたモデルを検討・分析した。この際、バーゼル銀行監督委員会が複雑性を排除し、より簡素さを求めていることも考慮した。当該モデルを相関の観点から分析した結果、業種相関の推定に使用する株価データの選定が重要であることが示された。また、流動性ホライズンの観点からは、FRTBの要件と内部管理モデル上の流動性ホライズンの前提の違いが、金融機関の投資行動に影響を与えうるという示唆を得た。

キーワード:信用リスク、バーゼル規制、FRTB、トレーディング、内部モデル、デフォルト事象の相関、流動性ホライズン


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