金融研究 第35巻第3号 (2016年7月発行)

グローバル・バリュー・チェーンの長さ指標:製造業とサービス業

菅沼健司

本稿では、「上流度指数(upstreamness)」と呼ばれる指標について分析する。この指標は、サプライ・チェーンにおける、ある産業の最終消費者までの距離について、その間に経る生産段階の数として定義した指標である。国際産業連関表を用いて分析すると、世界全体でみたグローバル上流度は、2000年代半ばに大きく増加していた。この増加は、主として製造業によるものであるが、サービス業にも一定の寄与がみられる。製造業では、東アジア諸国・地域において、上流度が増加しており、この地域でバリュー・チェーンが深化した事実と整合的である。一方、サービス業では、先進国の対事業所サービスで、顕著に上流度が増加している。この点、日本の国内連関表を用いて仔細に分析すると、事業の外注化の受け皿となるリースや労働者派遣に加え、情報通信業など他の産業と結びつきやすい産業の発展が、上流度の増加を促していることが示された。本稿では、国、産業あるいは生産段階別の寄与度分解を行い、上流度指数を詳細に分析している。本稿で用いた分析手法は、付加価値との比較を通じた産業の国際競争力の分析や、投入・産出関係を通じた経済ショックの波及分析などに応用していくことが期待される。

キーワード:上流度、グローバル・バリュー・チェーン、生産工程の細分化、産業連関表


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