金融研究 第35巻第1号 (2016年1月発行)

金融機関のコーポレート・ガバナンス:会社法と金融規制の関係に関する一考察

加藤 貴仁

コーポレート・ガバナンスは、様々な形で定義されている。しかし、経営者の報酬など、伝統的に会社法による規制対象とされてきた問題が分析される際、それは、株主と経営者のエージェンシー問題を解決する手段として位置付けられている。言い方を変えれば、「良きコーポレート・ガバナンス」とは株主と経営者のエージェンシー問題を解決し、株主利益を向上させる仕組みとして理解されてきた。しかし、2007年から2008年にかけて深刻化した世界的な金融危機は、このような「良きコーポレート・ガバナンス」によって、金融機関の健全性が害される可能性があるのではないかとの懸念を生み出したように思われる。
金融機関の健全性を維持することは、金融規制の重要な目的の一つである。しかし、株主利益と金融規制の目的が相互に対立する可能性があることに留意されるべきである。そのため、金融規制を構築する際に、金融規制の目的を達成するために会社法の基本原則を修正することを迫られることもある。
本研究では、会社法と金融規制の関係が、会社法と金融規制の抵触、金融規制による会社法の補完・代替、会社法による金融規制の補完という枠組みを利用して分析される。その結果、金融規制は、金融機関が株式会社形態で営まれる意義を減殺しないとの制約の下で、金融機関のコーポレート・ガバナンスを規制対象とすべきことが基礎付けられる。

キーワード:コーポレート・ガバナンス、企業統治、会社法、銀行法、金融規制、銀行、金融機関


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