金融研究 第34巻第4号 (2015年10月発行)

ICカード利用システムにおいて新たに顕現化したPre-play attackとその対策

井澤秀益、廣川勝久

近年、キャッシュカードやクレジットカードの偽造・不正使用に対する耐性を高めるためICカード化が進められている。こうした金融分野におけるICカードを用いたカード取引のためのICカードと端末に関する仕様を定めたデファクト標準としては「EMV仕様」があり、日本を含め国際的に利用されている。EMV仕様においては、そのセキュリティ機能の1つとして、取引データが改ざんされていないことや、当該取引のためにICカードが利用されていることを保証する「取引認証」の仕組みがある。
しかしながら、近年、英国ケンブリッジ大学の研究グループが、この「取引認証」に対して、ある条件のもとで攻撃が成立し、実質的に正規ICカードが行う取引と同等の取引が攻撃者作製のカードで可能となることを発表した。本攻撃を発表したグループは当該攻撃手法を「Pre-play attack(プリプレイ攻撃)」と名付けており、欧州において実際に起こったATMからの不正現金引き出し事例について、本攻撃手法が使われた可能性を指摘している。
そこで本稿では、Pre-play attackの手法や攻撃が成立する条件等について解説するとともに、Pre-play attackへの対策手法を検討する。

キーワード:ICカード、EMV仕様、取引認証、Pre-play attack


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