金融研究 第34巻第3号 (2015年7月発行)

金融危機・事業再生と公的支援規制

白石忠志

本稿は、経営が悪化した事業者に対して国などが公的再生支援をおこなう際の競争政策の観点からの規制について、その一端を垣間みようとするものである。具体的には、この分野について突出した発展をみせているEU のState aid規制について基本構造を確認し、日本の現状をみたあと、EUの2つの状況をやや詳細にみる。第1は、金融機関に対する公的再生支援の規制である。金融危機の直後における状況を表す2008年銀行コミュニケーションを詳細にみたあと、その総括である2011年ワーキングペーパーおよび2013年銀行コミュニケーションを概観する。第2は、非金融機関に対する公的再生支援の規制であり、State aid規制の現代化の成果である2014年救済支援・事業再生支援に関するガイドライン(R&R ガイドライン)を詳細にみる。この作業によって、金融機関の公的再生支援においては金融システムの安定の要請が前面に出され、公的再生支援に対する規制が相対的に緩いとされる状況はあるものの、具体的内容をみるに、非金融機関の公的再生支援に対する規制とさほど大きな違いはないようにも感じられ、違いがあるとしても程度問題にとどまるようにみられることが明らかとなる。

キーワード:独占禁止法、競争法、公的支援、公的再生支援、State aid、EU、competition law


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