金融研究 第34巻第2号 (2015年4月発行)

日本銀行の対民間信用供与における「国債担保貸出」の位置づけについて

森田 泰子

日本銀行の対民間貸出における「国債担保貸出」の位置づけには変遷がある。本稿では、その変遷について、国債担保貸出利率と商業手形割引歩合の大小関係の推移に焦点を当てて整理を行う。その概要は次のとおりである。
(1)日本銀行条例の起案者は「日本銀行は商業銀行の銀行として設立されるものであり、公債担保貸出は抑制し、手形割引資金を確保する」と考えていた。
(2)日本銀行設立当初から昭和40 年代前半に至るまで、「商業手形割引歩合を低く、貸付利子歩合を高めにする」との考え方で金利設定が行われており、国債担保貸出利率が商業手形割引歩合と同一とされたのは、戦費調達のための国債の市中消化促進という要請が優先した場合の例外的な取扱いであった。
(3)昭和44 年9 月1 日の公定歩合引上げに当たり、商業手形割引を優遇する意義が薄れていること等を理由として、「商業手形割引歩合」と「国債または特に指定する債券を担保とする貸付利子歩合」の一本化が行われた。
昭和44 年9 月の変更は日本銀行設立時の考え方を大きく変えるものと考えられる。そこで本稿の後半では、昭和44 年9 月の変更の概要、変更理由について日本銀行金融研究所アーカイブ保管資料(以下「日本銀行アーカイブ資料」)を用いて紹介するとともに、当時の金融・経済環境や国債担保貸出を巡る議論等について日本銀行アーカイブ資料のほか『昭和財政史』等も用いて整理・紹介のうえ、昭和44 年9 月の制度変更の背景等に関して考察を行う。

キーワード:日本銀行、国債担保貸出、商業手形割引


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