金融研究 第34巻第1号 (2015年1月発行)

ワークショップ「コーポレート・ガバナンスが企業の会計戦略を通じて企業価値に与える影響について」の模様

日本銀行金融研究所では、企業会計に関する研究の一環として、2014年3月17日、「コーポレート・ガバナンスが企業の会計戦略を通じて企業価値に与える影響について」をテーマにワークショップ(座長:中野 誠・一橋大学教授)を開催した。
国際財務報告基準(IFRS)財団ないし国際会計基準審議会(IASB)の活動は、設立当初急務であったIFRSの開発がほぼ一段落し、足許、確立した基準のメンテナンスおよびそれらの各国・地域への浸透に重点がシフトしつつある。IFRSの各国・地域への適用状況をみると、IFRSそのものをすべての全企業に強制適用する例もみられるものの、一部企業への強制ないし任意適用にとどめたり、基準の一部を削除または修正して導入する例も少なくない。こうした現状は、会計基準の具体的な適用において、国や地域ごとに異なる企業環境ないし制度的要因との関連性を完全に無視するのが難しいことを示唆していると考えられる。また、会計基準の共通化により財務報告の形式的な比較可能性の向上は期待されるものの、ある基準の適用が、各国・地域における制度的要因の違いやそれに起因する経営者の裁量的な会計行動等によって、企業の投資行動や企業価値ひいてはマクロ金融経済に対して予期せぬ影響をもたらす可能性もあろう。本ワークショップは、こうした問題を考える際の材料を提供することを目的として、各国・地域における会計基準の適用に影響を与えるであろう制度的要因のうち、コーポレート・ガバナンスに焦点を当て、それと経営者の会計戦略および企業価値との関連性について、学際的・実務的観点から議論を深めることを目的として開催された。
本稿では、本ワークショップにおける導入報告、コメント、リジョインダー、討論および座長総括コメントの概要を紹介する。

キーワード:IFRSの影響、会計戦略、コーポレート・ガバナンス、企業価値(株主価値)、利益調整、保守主義、企業行動


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