金融研究 第33巻第3号 (2014年7月発行)

格付会社の私法上の義務と民事責任に関する一考察:各種ゲートキーパー責任との比較に照らして

杉村 和俊

証券投資のリスクについては一般論として、投資家の自己責任原則が妥当し、わが国の判例・通説においても確認されている。しかしながら、言論の自由を根拠として格付会社を特権的に責任追及から保護してきた米国において、金融危機以降は格付会社に対し、投資家の損害を賠償するよう求める訴訟が提起・審理され、格付会社の保護を限定しようとする解釈の方向感が裁判所によって示されている。わが国においても、投資家に対する格付会社の損害賠償責任が例外的に発生する可能性を認めた裁判例があるが、その射程は必ずしも明らかではないと評されている。不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性の存在が格付会社の適正な業務遂行を促すという効果に着目すれば、格付会社に求められる注意義務水準は、できるだけ明確化されていることが望ましい。本稿はその明確化の一助とすべく、各種ゲートキーパーの投資家に対する責任に関する立法、裁判例、学説等を参照し、投資家の自己決定基盤を確保するためにゲートキーパー責任が認められるべきと考えられている範囲を整理したうえで、それと比較する中で、格付会社の義務と責任について試論を行うものである。

キーワード:格付会社、民事責任、ゲートキーパー、投資家の自己責任原則、自己決定基盤


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