金融研究 第33巻第3号 (2014年7月発行)

デリバティブ取引等の一括清算ネッティングを巡る最近の議論:金融危機後の米国での議論を踏まえた一考察

山本慶子

2007 年夏以降の世界的な金融危機においては、店頭デリバティブ取引の主要な市場参加者の破綻に伴うカウンターパーティ等への破綻の連鎖や、担保の大量処分等による国際金融市場の混乱が強く懸念される事態等が生じた。金融危機の中で浮き彫りになったデリバティブ取引やレポ取引にかかる問題点への対応策については、金融危機後の国際的な規制・監督等の見直しの議論が進み、その多くは既に実施されつつある。他方、米国では、こうした動きとは別に、連邦倒産法におけるデリバティブ取引やレポ取引に対する優遇の妥当性を巡る議論がみられている。すなわち、米国連邦倒産法では、デリバティブ取引やレポ取引にかかる一括清算ネッティングの有効性が例外的に認められているが、こうした取扱い自体が金融危機の拡大やシステミック・リスクの発生に寄与しており、再検討が必要ではないかとの議論がなされるなど、一括清算ネッティングの有効性を認めるべきというこれまでのコンセンサスに多少の揺らぎが生じている。そこで本稿では、米国連邦倒産法におけるデリバティブ取引やレポ取引の取扱いを巡る米国での最近の議論を紹介するとともに、その議論をわが国倒産法に当てはめて考えた場合に問題となり得る論点等について考察する。

キーワード:一括清算ネッティング、米国連邦倒産法、倒産解除条項、一括清算法、双方未履行双務契約


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