金融研究 第33巻第1号 (2014年1月発行)

会計の契約支援機能を踏まえた情報提供のあり方について:公正価値評価の拡大の影響を中心に

徳賀 芳弘、太田 陽子

 本稿は、会計情報の投資意思決定支援機能を高めながら、その契約支援機能に大きな問題を引き起こさせないような情報提供のあり方について検討することを目的としている。2008 年9 月に始まる金融危機の時期まで、国際会計基準において公正価値評価の拡大が進められてきたが、こうした方向性が契約(私的契約および公的規制)における会計情報の利用に与える影響等について考察し、次のような知見(因果推論による仮説)を得た。第1 に、契約に直接利用される財務諸表本体情報については、未実現利益や経営者の見積もり・裁量余地を含む評価損益を除外し、検証可能性を確保するかたちでの修正・調整が可能な情報であれば、その契約支援機能に大きな問題を引き起こさない。第2 に、投資意思決定支援の観点から、公正価値評価の対象とする資産・負債と取得原価(償却原価)評価の対象とする資産・負債を、ビジネスモデルの差異を基準として区別する考え方に立つと、投資意思決定支援機能と契約支援機能に求められる財務諸表本体情報は重なり合う部分が多い。第3 に、リスク情報やガバナンス情報など、検証可能性は低くても契約に有用な情報は、財務諸表本体情報を補足・補完する注記情報等として提供されることが望ましい。

キーワード:公正価値、投資意思決定支援、契約支援、経営者報酬契約、財務制限条項、配当規制、金融監督・規制


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