金融研究 第32巻第3号 (2013年7月発行)

公開鍵暗号を巡る新しい動き:RSAから楕円曲線暗号へ

清藤 武暢、四方 順司

 金融分野では、各取引においてやり取りされる情報の安全性を確保するために共通鍵暗号や公開鍵暗号等が広く利用されている。RSAは現在主流の公開鍵暗号として幅広く普及しているが、計算機性能向上等に付随する解読リスクの高まりに伴い、鍵長を長くする等の対策が求められており、従来のハードウエア環境での実装が難しくなる等の可能性が無視できなくなりつつある。また、管理者のミス等により脆弱な鍵が発行されやすいという運用上の問題も指摘されている。
 こうした状況下、RSAに代わる公開鍵暗号として「楕円曲線暗号」が注目されている。楕円曲線暗号は、RSAと比較したとき、短い鍵長で同程度の安全性を保証できることや、鍵生成に関する運用上の問題が発生しにくいという利点を有しており、近い将来RSAに代わって公開鍵暗号の中心的な役割を担うことが期待されている。しかし、楕円曲線暗号はRSAとは異なる技術的特徴を有しており、安全に利用するためにはその仕組みや安全性評価の動向に関する専門的な知識を有しておくことが必要である。
 そこで、本稿では、楕円曲線暗号の概要や安全性評価に関する最近の研究動向を紹介するとともに、同暗号を安全に利用する際の留意点について考察した。その結果、米国立標準技術研究所(NIST)の公表情報等を適切に活用することにより、楕円曲線暗号を安全に利用することができることがわかった。ただし、攻撃手法の研究は進展途上にあり、今後もその研究動向について注視する必要がある。

キーワード:公開鍵暗号、RSA、楕円曲線暗号、楕円曲線離散対数問題、指数計算法、計算量


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