金融研究 第31巻第4号 (2012年10月発行)

利益平準化行動がアナリスト予想と固有株式リターン・ボラティリティに及ぼす影響

中野 誠、高須 悠介

 本稿では、わが国において、経営者の利益平準化行動が資本市場参加者の情報解釈にいかなる影響を及ぼしているのかを検証している。プレーヤーとしては、情報発信者としての経営者、情報仲介者としての証券アナリスト、情報利用者としての投資家を想定する。第1分析として証券アナリストの利益予想行動に対して、利益平準化が及ぼす影響を分析する。第2分析として、利益アナウンスメントをイベントとした場合、固有株式リターン・ボラティリティ(idiosyncratic return volatility: IRV)に対して、利益平準化行動が及ぼしている影響を分析し、利益平準化行動の情報伝達機能を検証する。
 第1分析では、経営者の保有する私的情報の伝達を通じて、利益平準化がアナリストの情報解釈力向上に貢献している点が明らかにされる。第2分析では、利益が平準化されている場合、利益サプライズが生じたとしても、投資家は短期間に当該サプライズ情報を織り込む点が明らかにされる。いくつかの追加分析、頑健性テストを実施したが、これらの結果に変わりはない。
 本研究の分析結果は、利益平準化は市場参加者に対して、経営者の将来志向的な私的情報を伝達する機能を有している可能性を示唆している。加えて、利益平準化の私的情報伝達機能をイベント・スタディという新しい形で提示した点も、本研究の特徴といえよう。

キーワード:利益平準化、アナリスト予想、利益アナウンスメント、固有株式リターン・ボラティリティ、私的情報伝達機能


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