金融研究 第30巻第4号 (2011年10月発行)

政治経済学の新展開:中位投票者定理を巡って

浅古 泰史

 本稿では、近年発展している政治経済学について、特に中位投票者定理以降の理論的展開を、候補者の政策に対するコミットメントを軸に概観する。中位投票者定理によれば、候補者は、同一の政策を選択し同一の勝利確率に服する。この結論は、現実との整合性に欠き、また、候補者の複雑な戦略的行動を説明することができない。そこで、中位投票者定理を導出するための仮定を緩めることが必要となる。中位投票者定理は多くの仮定を前提とするが、本稿では特に、候補者は「政策にコミットできる」との仮定に着目する。「政策にコミットできる」との仮定を前提にする限り、他の仮定を緩め、理論を拡張したとしても、中位投票者定理の結論がほとんど崩れない、均衡が存在しない、あるいは極めて多くの均衡が存在するという結果になる。「政策にコミットできない」と仮定すると、候補者の選挙への参入・退出の分析、政治家の過去の業績をもとにした投票の分析などへの可能性が広がる。「政策に部分的にコミットできる」という中間的な仮定を用いると、候補者の戦略をより詳細に検討することができる。

キーワード:政治経済学、公共選択、中位投票者定理、投票行動、プリンシパル・エージェントモデル、コミットメント、シグナリング


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2011 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム