金融研究 第30巻第1号 (2011年1月発行)

信用リスク移転機能の発展と最適ローンポートフォリオ選択

新谷幸平、山田哲也

 近年、クレジット・デリバティブや証券化などの信用リスク移転手段が発達したことに伴い、金融機関はローンポートフォリオの信用リスクを効率的にヘッジし、分散化することが可能となった。しかし、証券化は、金融機関の過剰なリスクテイクを助長したとの批判も根強い。そこで、本稿ではこのようなリスク移転手段の発達により、金融機関のローンポートフォリオおよびそのリスク・リターン特性がどのように変化するのかをポートフォリオ選択の視点から理論的に分析する。
 具体的には、銀行が保有するローンの一部だけが取引可能な不完全市場を想定して、銀行の最適ローンポートフォリオを導出する。その結果、市場の発展は、基本的に銀行のシャープレシオを上昇させ、投資効率を高めるという点でプラスの効果を与えることを示す。また、市場の発展途中では、完全市場の場合と異なり、銀行の目標収益や許容リスク量あるいはリスク回避度の水準次第で、シャープレシオが異なりうることを示す。このほか、自己資本の毀損などによりリスク回避度が高まる銀行が登場した場合には、市場の価格が変動することを通じて、他の銀行のポートフォリオ選択に影響が及ぶことなどを示す。

キーワード:CAPM、ポートフォリオ選択、不完全市場、信用リスク移転、ローンポートフォリオ、リスクプレミアム


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2011 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム