金融研究 第28巻第3号 (2009年10月発行)

量子暗号通信の仕組みと開発動向

後藤 仁

 現在広く利用されているRSAやAESのような暗号方式は、計算量的に安全な暗号方式と呼ばれ、現実に利用可能な計算能力を最大限投入したとしても、暗号文や秘密鍵を現実的な時間で解読することは困難である。しかし今後、量子コンピューターのように極めて高い計算能力を持つコンピューターが開発されたとき、これらの暗号方式は現実的な時間内に解読することが可能になるといわれている。
 こうした中、次世代の暗号として量子暗号が注目を集めている。量子暗号とは、従来の暗号のように式の計算や数字の置換えによって情報を隠すのではなく、量子力学という物理法則の原理により通信途中での盗聴を完全に防ぐ方式であり、量子コンピューターでも解読は不可能である。
 もっとも量子暗号は、通信の途中で減衰して消滅したり、観測すると変化してしまったりするような量子1個に情報を載せて通信を行うものであり、その通信距離や通信速度には大きな制約が存在する。また、その機能は暗号鍵の共有のみであり、メッセージの暗号化にはバーナム暗号等従来型の暗号を利用する必要がある。量子暗号は、従来の暗号化のイメージと大きく異なった部分があり、それを組み込んで活用する際には、システム全体のリスクを十分に評価したうえで慎重に行うことが必要となる。本稿では量子暗号の元になっている量子力学の概要から量子暗号の原理やその特徴までわかりやすく説明する。

キーワード:暗号技術、量子暗号、BB84、Y-00、量子力学


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