金融研究 第28巻第2号 (2009年7月発行)

人工物メトリック・システムにおける耐クローン性の評価手法の構築に向けて

田村裕子、宇根正志

 人工物メトリクスは、各人工物に固有の特徴を利用して当該人工物の認証を行う技術である。金融分野においては、金融取引に用いられる紙やカード等の人工物の真正性を根拠として取引を行うケースが多く、人工物メトリクスを偽造防止技術の1つとして活用することが考えられる。そうした際には、人工物メトリクスを実現するシステム(人工物メトリック・システム)を適切に選択することが重要となるが、偽造防止技術として活用するという性格上、人工物の偽造に対して十分な耐性を有しているか否かを確認することが求められる。人工物の偽造の難しさ(耐クローン性)を評価する方法については、現在研究が進められている最中である。
 本稿では、既存の評価事例を参考に、人工物メトリック・システムにおける耐クローン性の評価方法のアイデアを示す。具体的には、攻撃に用いられる人工物の偽造方法をリストアップしたうえで、最も効率的とみられるものが用いられたときの偽造にかかる資金や時間を試算し、その結果を耐クローン性の評価尺度の1つとするというものである。本稿では、こうした評価方法について説明したうえで、既存の人工物メトリック・システムに関する耐クローン性の評価事例を本評価方法に適用して評価の具体例を示すとともに、本評価方法を精緻化するうえでの今後の課題を説明する。

キーワード:偽造防止技術、人工物メトリクス、人工物メトリック・システム、セキュリティ評価、耐クローン性


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