金融研究 第28巻第2号 (2009年7月発行)

戦間期日本企業の資金調達、資本コスト、資本構成:最適資本構成理論からみた1930年代における企業財務

南條隆、橘川武郎

 戦間期日本企業は、資本市場の発展を背景に株式や社債による資金調達を活発に行った。東邦電力、日本窒素肥料、東京地下鉄道の事例からは、企業が資本コストを重視する財務戦略をとっており、時期によって資金調達方法を機動的に変化させ、資本構成(株主資本と負債の割合)をコントロールしていたことが示唆された。Modigliani and Miller [1958]を嚆矢とし、節税効果、倒産コスト、エージェンシー・コスト等の要因を取り入れた最適資本構成の理論を基に、戦間期日本企業約170社の1930年代における負債比率関数を推計したところ、負債比率は、企業規模、減価償却、収益力、ガバナンス構造等によって規定されていたとの結果が得られた。ガバナンス構造については、財閥系企業であることが負債比率を大きく引き下げており、財閥がモニタリング等を通じて株主資本のエージェンシー・コストを引き下げていたことが示唆された。

キーワード:資本コスト、資本構成、レバレッジ、コーポレート・ガバナンス、株式所有構造、戦間期、財閥


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