金融研究 第28巻第1号 (2009年3月発行)

欧州における決済サービスの新たな法的枠組み:決済サービス指令の概要

吉村 昭彦、白神 猛

 EUでは、2007年11月、決済サービス指令が成立した。本指令は、EU域内市場におけるリテール決済サービスの競争を促進する観点から、「決済サービス機関(payment institution)」という法規制上の新たな業者概念を創設した。また、本指令は、決済サービス業者による利用者への情報提供義務のほか、決済サービス業者と利用者との間の多岐にわたる権利義務関係について各種のリテール決済サービスを横断的に規律する包括的な決済法制となっている。本稿は、この決済サービス指令の規定内容やその背景にある考え方の紹介を目的としている。本稿は、まず本指令制定以前からのリテール決済サービス市場のEU域内統合に向けた取組み(従来のEUレベルの法的枠組みやSEPA(Single Euro Payments Area))を紹介したうえで、本指令立案から制定に至るまでの経過、本指令立案の基本的な手続、本指令の目的等および本指令の構成を概観する。続いて、本指令制定の際の主要な争点となった事項、具体的には、(1)本指令の適用範囲、(2)新たな業者概念としての決済サービス機関の創設、(3)決済サービス業者の情報提供義務、(4)無権限取引における決済サービス業者と利用者との間の損失分担ルール、(5)決済取引の実行に要する期間の短縮および(6)決済取引が実行されない場合や決済取引の実行に瑕疵がある場合における決済サービス業者の責任を取り上げる。

キーワード:決済サービス指令、決済サービス機関、SEPA、EU金融資本市場、決済法制


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