金融研究 第28巻第1号 (2009年3月発行)

会計上の負債と払込資本の区分をめぐる国際的な動向とわが国への適用可能性について

秋坂 朝則

 米国財務会計基準審議会(FASB)が2007年11月30日に公表した予備的見解「資本の特徴を有する金融商品」では、負債と資本の区分に関する会計基準の案が詳細に検討されている。そこで示されている会計基準(案)の考え方がそのまま基準化される可能性は低いと思われるが、仮に基準化されてわが国に導入されるとすれば、わが国の資本会計に大きな影響を与えることになると思われる。しかも、予備的見解で示されている内容は、わが国の会計基準とは大きく異なっており、その考え方を導入するにはさまざまな問題を解決しなければならない。そこで、本稿においては、まず、FASBが提案する会計処理の概要を説明し、つぎにこのような会計処理がわが国に導入された場合の問題点の指摘を行っている。
 予備的見解は、法的形式が株式であったとしても、その経済的効果が普通株式と異なる場合には、当該株式を負債として会計処理すべきであるとしている(「基本的所有アプローチ」)。そして、その考え方の基は、資本とすべきものを普通株式(基本的所有商品)に限定し、ストラクチャリングの機会を減らすことにあるように思える。予備的見解で示されている会計処理方法をわが国に導入する際には、種類株式を中心とした金融商品の発行会社における会計処理の問題ばかりではなく、資本の有している機能との関係において生ずる問題も重要となる。つまり、資本は株式会社における機関設計の基準(ガバナンスの基準)とも関係しているし、分配可能額の算定の基準としても用いられることから、資本会計は会社法の規定と密接に関係している。このため、予備的見解に基づく資本概念を導入するには会社法との調整が不可避の問題となる。このように、本稿では、予備的見解に示されている基本的所有アプローチをわが国に導入するうえで解決しなければならない課題が多いことを指摘している。

キーワード:負債と資本の区分、資本会計、基本的所有アプローチ(Basic Ownership Approach)、基本的所有商品、種類株式、金融商品会計


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