金融研究 第28巻第1号 (2009年3月発行)

株式分割払込制度と企業金融、設備投資の関係について: 1930年代初において株式追加払込が果たした役割を中心に

南條 隆、粕谷 誠

 戦前期の株式分割払込制度は、株主が株式額面の全額を1度に払い込むのではなく、複数回に分けて払い込むという資本金制度であり、株主の払込負担の軽減等を通じて資本の社会的集中を促進するために明治期に導入された。株式分割払込制度のもとでの追加払込は、企業のイニシアティブで行われ、商法や定款で払込に応じない場合のサンクションが規定されるなど制度的な強制力を有していたため、金融市場がタイト化する恐慌期等において最後の資金調達手段として機能し、企業の資金繰りや設備投資に寄与していたと考えられる。1930年代初の企業金融が逼迫した時期においては、幅広い業種の企業が追加払込金を徴収し、その資金で設備投資や負債返済等を行ったことが、営業報告書や社史等の史料から確認された。また、三菱経済研究所『本邦事業成績分析』と東洋経済新報社『株式会社年鑑』から174社の企業財務データベースを作成し、1932年度における設備投資関数のクロスセクション推計を行ったところ、企業の設備投資は、流動性制約と負債制約を受けていた一方で、株式追加払込が流動性制約を緩和し、設備投資を増加させていたことを示唆する結果が得られた。

キーワード:株式分割払込制度、企業金融、設備投資、コーポレート・ガバナンス、金融システム、戦間期、昭和恐慌


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