コール市場の資金・決済の流れは近年大きく変化してきた。本稿では、ソーシャル・ネットワーク分析手法を活用し、日銀ネットの決済データを用いてコール市場の取引構造の検証を試みた。その結果、コール資金の流れは、短資会社がハブとして仲介役を果たすスター型ネットワークから、他のさまざまな経路が存在する分散型ネットワークに変化していることが確認された。分散型ネットワークにおいては、一部の業態から構成される中核的ネットワーク(コア)が形成されていること、コアの構成員はネットワークの周辺に対するハブになっており、これにより資金取引ネットワークのほとんどが平均2~3ステップでつながっていること、周辺には特定の集団でクラスター化した部分が存在するほか、コアに対するリンクが強い先、弱い先など、多様なネットワーク構造が存在することが観察された。こうしたネットワーク構造はシステミック・リスクの観点から重要である。流動性ショックがコール市場全体に伝播していく、あるいは逆に吸収されていく過程は、ネットワークの構造に強く依存すると考えられる。
キーワード:インターバンク市場、RTGS、ネットワーク、スモール・ワールド、コアと周辺、システミック・リスク
掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。