金融研究 第27巻第4号 (2008年12月発行)

実物景気循環理論と日本経済

大津 敬介

 本稿では、確率動学一般均衡分析の基礎となる実物景気循環(RBC)モデルを理論的に解説し、当モデルを用いて日本経済の景気循環を分析する。まず、基本的なRBCモデルは、全要素生産性(TFP)の外生的変化によって、日本の景気循環の特徴を概ね説明できるが、労働投入量に関しては、変動が小さい、生産との相関が高すぎるなどといった点で説明力が低いことを示す。次に、景気循環会計(BCA)モデルは、TFPと労働市場における歪み(労働ウェッジ)の変化によって、労働投入量の変化を含めた日本の景気循環の特徴を説明できることを示したうえで、バブル期における好況はTFPの成長が、1990年代不況は労働ウェッジの拡大が主な要因であることを示す。これは、もしも金融市場の不完全性や銀行問題がバブルと1990年代不況の要因であるならば、それがTFPと労働ウェッジの変化を通じて生産に影響を与えていなくてはいけないことを示唆している。最後に、国際RBCモデルを用いて、日米間の景気循環の相関関係は、TFPと労働ウェッジだけでは説明することができないことを示し、両国間で、消費が平準化されず、投資が効率的に配分されないような障害が存在している可能性を提示する。

キーワード:実物景気循環理論、景気循環会計、TFP


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