金融研究 第27巻第3号 (2008年8月発行)

家計別物価指数の構築と分析

北村行伸

 本稿は消費者物価指数を『全国消費実態調査』の個票情報を用いて、各家計別に物価指数を構築し、それに家計属性やマクロ経済変数を加えることで、従来行われてきた物価分析に新たな視点を与えようとするものである。具体的には、平成11(1999)年度の『全国消費実態調査』の各家計の消費バスケットに政府の消費者物価指数で用いられている品目別価格データを適用することによって家計別物価指数を計算した。この指数によって価格の変動が個別家計にどのような影響を与えたかを統計的に検証した。その結果、家計別インフレ率は正規分布に従っていること、そのインフレ率には粘着性があり、家計ごとに固定的要素が影響を与えていること、すなわち、40~49歳世代のインフレ率が最も高く、65歳以上の高齢者のインフレ率は低いこと、18歳以下の子供が多いほどインフレ率は高くなること、東京や大阪などの大都市のインフレ率は一般に高いが、2000~05年には物価下落も大きかったことなどがわかった。また、高額支出家計は一般にインフレ率が高かったが、2000年に入ってからは逆にデフレ率が最も高かったこともわかった。家計別インフレ率はその分布情報など金融政策にとって有益な情報を提供してくれる。

キーワード:家計別物価指数、インフレ率、価格変動、指数問題


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