金融研究 第26巻別冊第1号 (2007年8月発行)

リテール・バンキングのセキュリティ向上を目指して

岩下 直行

 2004年から2005年にかけて、わが国の銀行業界が偽造キャッシュカード問題への対応を巡って激しい批判を浴びてから、約2年が経過した。金融機関がATMにおける引出限度額を引き下げたことや、利用者への注意喚起を行ったことの効果もあって、偽造キャッシュカードによる不正預金引出の被害金額は、このところ減少してきている。偽造・盗難カード預貯金者保護法が施行され、被害者に対する補償が進んだこともあって、銀行業界に対する批判はようやく沈静化しつつあるように窺われる。
 しかし、やや長い目でみたとき、わが国におけるリテール・バンキングのセキュリティには、未だに不安な要素が残されている。特に、偽造カード犯罪の未然防止対策として導入されたICキャッシュカードや生体認証といった新しい情報セキュリティ技術は、現時点ではあまり普及しておらず、その特性が十分に活かされているとはいいがたい状況にある。このため、今後、外部環境が変化すれば、再び偽造カード犯罪が増加しないとも限らない。これらの技術を活用してリテール・バンキングのセキュリティを抜本的に改善していくためには、アカデミックな知見を活用して技術の内容に関する詳細な検討を進めるとともに、業界全体として普及促進のためのグランドデザインを描いていくことが必要であろう。


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