金融研究 第26巻第4号 (2007年12月発行)

東アジア経済の金融統合

萩原景子、藤木裕

 本稿は、東アジア経済の国際金融市場への統合度合と、その主要マクロ経済変数にもたらす影響について分析し、政策含意を導いている。分析によれば、東アジア経済の国際金融市場への統合は進展している。その金融統合の進展がマクロ経済変数にもたらす影響については、次の3つの結果を報告している。第1に、マクロ経済変数の簡単な2次元プロットからは消費の相対的な変動幅の低減を支持する結果はみられない。第2に、貯蓄・投資の相関係数はユーロ圏経済より東アジア経済のほうが高い。第3に、他国の金融資産を持ち合うことによって、東アジア経済に固有のショックを平準化する度合は、ユーロ圏経済より低い。これらの結果から、2つの政策含意が得られる。第1に、東アジア経済ではリスク・シェアリングの度合を高めることによって、社会厚生をさらに改善する余地があること。第2に、他のすべての条件を一定として、国際金融市場との統合度合が上昇するだけでは、現段階で東アジア経済での通貨統合を実現する土壌が整えられる可能性は少ないことである。

キーワード:為替相場制度、金融統合、リスク・シェアリング


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