金融研究 第26巻第3号 (2007年8月発行)

非金融負債をめぐる会計問題

川村義則

 本稿の目的は、非金融負債をめぐる会計問題について、主として国際会計基準審議会(IASB)が米国財務会計基準審議会(FASB)と共同で進めている非金融負債にかかるプロジェクトの研究成果である公開草案(2005年6月公表)を参考に、論点を整理したうえで、概念フレームワーク論および会計基準論等の観点から再検討を行うことにある。
 非金融負債の会計処理については、伝統的には将来の経済的資源の流出が生じる蓋然性が一定の閾値を超えたときにその認識と測定を行うアプローチがとられてきた。これに対して、IASB公開草案では、将来の事象の生起を条件とする条件付債務についても現在において履行準備のための無条件債務を負担しているとして、蓋然性の程度のいかんにかかわらずこれを認識し、蓋然性は測定すべき額に反映させるアプローチが採用されている。
 本稿では、これらのアプローチについて、負債の定義・認識・測定の手続にわたり詳細に検討するとともに、さらに、非金融資産に適用される会計処理である減損会計とのアナロジーの観点から、非金融負債の会計処理に対する第3のアプローチを示している。そのうえで、非金融負債の会計処理に際しては、非金融資産の会計処理との整合性が求められ、非金融負債については受取対価額によって原始認識および原始測定を行い、負債にかかる契約の負担増加が生じて負債の清算価額が帳簿価額を超えた場合には清算価額をもって測定する必要があることを指摘している。

キーワード:非金融負債、引当金、偶発負債、減損会計、概念フレームワーク


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