金融研究 第26巻第2号 (2007年4月発行)

バブル崩壊期の日本の金融政策:不確実性下の望ましい政策運営を巡って

木村 武、藤原 一平、原 尚子、平形 尚久、渡邊 真一郎

 本稿は、経済構造が不確実なもとでの望ましい金融政策について、1990年代前半のバブル崩壊期における日本銀行の政策運営を例に分析したものである。日本経済の大型マクロモデルであるJEM(Japanese Economic Model)を用いた確率シミュレーションによると、政策効果(政策乗数)の不確実性を考慮した場合には、当時の日本銀行の政策運営はほぼ最適なものであったとの結果が得られた。一方、インフレ過程(インフレの慣性)の不確実性を重視した場合には、実際の政策よりも積極的な対応が望ましかったとの結果が得られた。このように、どのような不確実性を重視するかによって結論は大きく異なるが、結果的に、1990年代後半以降デフレ克服が重要な課題になった点を踏まえれば、1990年代前半においてインフレ過程の不確実性をより重視し、積極的な金融緩和を行うべきであったとの議論は可能であろう。実際、そうした観点からカウンター・ファクチュアル・シミュレーションを行ってみると、1990年代前半においてより緩和的な政策対応を行っていれば、インフレ率や実質成長率をある程度下支えすることはできたという結果が得られた。ただし、シミュレーションは同時に、その効果は限定的であり、金融政策だけで、1990年代の長期停滞という全体像を変えることはできなかったであろうことも示唆するものであった。

キーワード:バブル崩壊、金融政策、不確実性、JEM(Japanese Economic Model)


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