本稿では、複数の企業のデフォルト・リスクを伴う信用派生商品を誘導型アプローチで価格評価する手法を示す。具体的な商品として、カウンターパーティ・リスクを考慮した場合のクレジット・デフォルト・スワップやバスケット型のクレジット・デフォルト・スワップに加えて、これらのスワップのオプション(スワップション)を評価の対象とする。特に、デフォルト・リスクをヘッジするこれらのスワップションの評価は必ずしも解析的に取り扱いやすい問題ではない。そこで、本稿では、クレジット・デフォルト・スワップの価格が偏微分方程式の解として与えられ、同スワップションはその解を基にモンテカルロ法で評価できることを示すほか、クレジット・デフォルト・スワップおよびスワップションの価格が、マリアバン解析をベースとして発展した小分散漸近展開法により、近似価格式を用いて評価可能であることを示す。
キーワード:クレジット・デフォルト・スワップ、クレジット・デフォルト・スワップション、コックス過程、偏微分方程式、小分散漸近展開、バスケット・スワップ、マリアバン解析
掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。