金融研究 第25巻第3号 (2006年10月発行)

量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ

鵜飼 博史

 本稿は、日本銀行が2001年3月から2006年3月まで採用した量的緩和政策の効果に関する実証研究のサーベイである。サーベイによると、量的緩和政策の継続に関するコミットメントが将来にわたりゼロ金利が継続されるとの予想を醸成し、短中期を中心にイールド・カーブを押し下げる効果は明確に確認された。日銀当座預金残高の供給増については、これが上記の予想を補強する局面もみられた。マネタリーベースの拡大や日本銀行の資産構成の変化がポートフォリオ・リバランスを生じさせる効果の有無については結果が分かれ、効果があったとする実証研究でもコミットメントの効果よりは小さかった。量的緩和政策がさまざまな波及メカニズムを通じて日本経済に及ぼした影響をみると、企業金融面で緩和的な環境を作り出したとの見方が多い。特に金融機関について、市場からの資金調達コストを抑制し、資金繰り不安を払拭したとの結果が得られている。一方、総需要・物価への直接的な押し上げ効果は限定的との実証結果が多い。その理由として、ゼロ金利制約以外に、企業のバランスシート調整等によるところが大きいとの分析結果が示されている。

キーワード:ゼロ金利政策、量的緩和政策、ゼロ金利制約、コミットメント、デフレーション


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