金融研究 第25巻第1号 (2006年3月発行)

戦前日本の金融システムは銀行中心であったか

寺西 重郎

 戦前の金融システムについては、産業銀行的な銀行を中心とする金融システムであったという後発資本主義国論の立場からの見解が、従来から支配的であり、資本市場の果たした役割を強調する研究は概して少数派であった。しかし近年、戦前における株式市場の発展を強調する研究が発表され、従来の通説との間で論争が起こっている。本稿では、数量的および質的な側面から銀行と株式市場の果たした役割を包括的に再検討する。数量的な面では、民間非金融部門の資産・負債構成と製造業および公益部門の主要企業の資金調達の長期データを検討する。民間非金融部門は全体として銀行借入に強く依存しているが、大企業のみをとると株式による資金調達への依存度が高いことが指摘される。また、こうした特徴には通時的な傾向が看取されるが、それらは、データのカバレッジの違いなどによるものであって、システムの基本的変化ではないことが明らかにされる。質的な面では、銀行と株式市場の資源配分機能(情報生産機能およびリスク負担機能)と企業統治機能の2側面について、両者の果たした役割を比較する。株式市場は、企業統治では一定の役割を果たしているものの、資源配分機能は資産家の狭いグループの内部でしか発揮されていないことが指摘される。他方、銀行は、資源配分機能の面ではリスク資金の供給で大きな役割を果たしたが、その企業統治機能は十分でないことが指摘される。

キーワード:戦前の日本、金融システム、銀行、株式市場、企業統治、リスク負担、情報生産


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