金融研究 第24巻法律特集号 (2005年11月発行)

外国中央銀行に対する民事裁判および民事執行

横溝 大

 本稿は、外国中央銀行に対する私人の請求につき、我が国裁判所が如何なる場合に民事裁判を遂行し、また民事執行を行うべきかを考察するものである。
国家や所謂公法人が国際取引に関与する頻度は益々増大しており、それに伴い契約違反や不法行為に基づいた私人による請求も頻繁になっている。こうした中、今後増加するであろう重要な問題として、外国金融当局、とりわけ外国中央銀行に対する民事裁判および民事執行という問題が挙げられる。
外国国家等に対する民事裁判および民事執行という問題は、これまで主として国際法上の主権免除の問題として議論され、各国において、国家が絶対的に外国の裁判権から免除されるという所謂絶対免除主義から、国家が主権免除を享有する範囲を一定の場合に制限する所謂制限免除主義へと移行しつつあることが指摘されているが、如何なる範囲や程度で国際慣習法が成立しているかは依然として不明確であり、実務上この問題に関する国際慣習法規が各国裁判所に十分な指針を与えているということはできない。また、外国中央銀行の扱いを巡っても、国際慣習法において何らかの規則が成立しているとは思われない。昨年12月、第59回国連総会において採択された「国家と国家財産の免除に関する国連条約」が発効したとしても、外国中央銀行に対する民事裁判および民事執行を巡っては、様々な問題が依然として残される。このような状況の下で、この問題に関する具体的論点を我が国抵触法(国際民事手続法)の観点から検討するには、比較法的考察が有益であると考えられる。
本稿では、外国中央銀行の取扱いにつき特別な配慮を払い、かつ裁判例も相対的に豊富なアメリカでの議論を参照したのち、我が国における議論について述べた上で私見を提示する。

キーワード:外国中央銀行、主権免除、国際民事手続法


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