金融研究 第24巻法律特集号 (2005年11月発行)

「金融機関のグループ化に関する法律問題研究会」報告書

 本稿は、「金融機関のグループ化に関する法律問題研究会」(メンバー<五十音順、敬称略>:岡崎哲二、小田切宏之、神作裕之、神田秀樹、北村行伸、斎藤誠、白石忠志、中里実、前田庸、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。
近年、わが国では、銀行や証券会社、保険会社が合併、経営統合、分社化、業務提携等の様々な形態により、金融グループを形成(グループ化)する動きが顕著になっている。このような動きは、主要国において共通にみられるものであり、欧米主要国では、「金融コングロマリット」と呼ばれる、クロスボーダーないしクロスセクターの大規模な金融グループの形成の動きが活発化している。このような金融機関のグループ化の動きを受けて、金融グループを巡る各種の法律問題が発生し、これに対応するかたちで、法的な側面からいくつかの検討課題が出てきている。本報告書では、このような金融機関のグループ化の背景は何か、これに対して法はいかに対応してきており、今後いかに対応すべきか、という問題について検討を行っている。
本報告書の論述は次の順序で進められる。まず、II.では、主として経済学の知見を参照することにより、企業グループ・金融グループの存在意義とグループ化の諸形態について検討を行う。III.ないしV.では、金融機関のグループ化が法規整に与える影響および法規整相互の交錯と調和に関する問題状況を整理する。まず、III.では、金融機関の「巨大化」(規模の拡大)の側面に着目し、競争法上の規整の現状と課題を概観したうえで、近時の金融機関のグループ化の動きに対する競争政策の運用状況を整理する。次に、IV.では、金融機関の「複雑化」(業務範囲の拡大)の側面に着目し、金融グループ内の情報共有に関する法規整および金融コングロマリットの規制・監督について、その現状と課題を整理する。さらに、V.では、金融機関のグループ化に関して、競争法や業法等の法規整に交錯が生じ、その調和が検討課題として認識されていることに鑑み、競争法と業法の法規整が交錯している局面の問題状況と、法規整の調和の試みについて触れる。VI.では、むすびとして、金融機関の経営モデル(金融モデル)のあり得るべき方向性とそれを受けた法規整の役割と課題について検討を行う。さらに、付論では、企業グループの形成・運営により生じる商法(会社法)上の諸問題(付論I.)、企業グループの形成面、運営面および国際的側面における税法上の対応について現状と課題(付論II.)を整理するほか、日米における銀行統合(合併等)に関する実証研究について概観する(付論III.)。 

(本報告書は、当初、2005年9月に公表された。その後、『金融研究』への掲載〈2005年11月〉に当たり、若干の編集上の変更が加えられている。)


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