金融研究 第24巻別冊2号 (2005年12月発行)

生体認証における生体検知機能について

宇根正志、田村裕子

 生体認証技術は、各個人に固有とみられる身体的特徴等を用いて自動的に個人を認証する技術であり、金融分野では銀行の窓口やATM等における顧客の本人確認手段の1つとして注目されている。しかし、本技術を安全に利用していくためには、身体的特徴の偽造に十分留意する必要がある。実際、安価に作製された人工指を一部の指紋照合装置が高い確率で本物と判定してしまうという実験結果が示されており、他の身体的特徴を用いた装置においても同様の脆弱性が今後顕現化する可能性は否定できない。
 こうした脆弱性への有力な対策の1つとして、生体検知機能の利用が挙げられる。生体検知機能は、人体の電気特性、光学特性、生理的特性等を用いて、身体的特徴が生体によって提示されたか否かを確認する機能である。本機能を適切に活用すれば、身体的特徴の偽造に対して一定の効果を期待することが可能であろう。
 しかし、生体検知機能の効果をどのように評価するかについては、これまで学会等のオープンな場ではあまり議論されてこなかった。今後、生体認証技術を適切に活用していくためには、生体認証システムのセキュリティ・レベルの維持・向上を図ることが重要であり、その手法の1つとして生体検知機能について検討することが求められる。
 本稿では、そうした検討の端緒として、生体検知機能の概念整理を行うほか、生体検知機能のセキュリティ要件やそれに基づく生体認証システムの分類法を検討する。さらに、最近の特許情報からいくつかの生体検知機能の手法を紹介するとともに、生体検知機能に関する今後の検討の方向性を示す。

キーワード:生体認証、生体検知、セキュリティ、脆弱性、指紋、静脈パターン、虹彩


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