金融研究 第23巻法律特集号 (2004年8月発行)

法・言語・貨幣
— ソフト・ローの観点からの研究ノート—

中里 実

 本稿は、貨幣または金銭について、公的・国家的な視点と私的・市場的な視点を結合させて考えるという観点から、金銭の特質や、金銭、言語、法の共通性およびこれらに関連するいくつかの論点について検討を加えた研究ノートである。
 本稿における検討の一端を示せば次のとおりである。近代的な意味の租税は、金銭の存在を前提としている。金銭の本質は、将来の任意の時期に、任意の人との間で、任意の実物資産と交換できるオプション権であり、この金銭のオプションの価値は、金銭に法律によって強制通用力が与えられているか否かにかかわらず、終局的には、人々の間の暗黙の合意(ソフト・ロー)によって与えられていると考えることができる。金銭、言語、法は、人々がそれを信じるからこそ妥当する、人々の合意がなければ国家といえども現実には強制できない、という点で類似している。また、3者は、ネットワーク外部性があること、利用者の範囲が限定され一種の管轄権が存在するが、技術の発展を背景として互換性が追求されること、においても共通している。

キーワード:金銭、貨幣、通貨、租税、国家、市場、ソフト・ロー


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