各地方裁判所で行われている不動産競売は、不良債権の担保を回収する際などに多く用いられる制度として、近年注目を集めている。競売市場での落札価額は、わが国において個別の不動産価額情報としては唯一、一般に公開されている取引価額であり、地価動向を把握するうえで有益な情報を有している。しかし、データの未整備により、これまで分析されることが困難とされてきた。そこで本稿では、過去10年間にわたる首都圏の不動産競売データを整備したうえで、競売物件の地価動向を、ヘドニック・アプローチにより探った。
その結果、首都圏の競売地価は、バブル崩壊後、一貫して前年水準を下回ったが、1997年の金融危機後を除けば、下落幅は縮小傾向にあることがわかった。また、競売地価は、鑑定価格をベースにした公示地価に比して、下落幅が大きく、変動が激しく、転換点については先行する傾向があることもわかった。
キーワード:不動産競売、地価、ヘドニック・アプローチ
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