金融研究 第23巻第4号 (2004年12月発行)

東アジア新興市場諸国の外貨準備保有高について

大谷聡、渡辺賢一郎

 本稿では、最近の東アジア新興市場諸国の外貨準備急増に焦点を当て、外貨準備レベルの決定理論や評価方法に関する既存研究のサーベイを通じて、現在、これらの国が採用している対ドル・レート安定重視の政策レジームとの関係から、外貨準備急増の意味を検討する。そのうえで、これらの国の政策レジームが将来変化する可能性についても考察を行う。巨額の外貨準備保有に伴う機会費用は、東アジア新興市場諸国が、現在の対ドル・レート安定を重視した政策レジームを維持するためのコストと捉えることができ、そのコストは近年の活発な資本移動のもとで上昇していると考えられる。加えて、中長期的には、現在の政策レジーム選択の背景にある諸条件が変化し、東アジア新興市場諸国にとって、より柔軟な為替レジームを選択するインセンティブが高まる可能性がある。

キーワード:外貨準備、バッファー・ストック・モデル、トリレンマ、原罪、為替レジーム


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