金融研究 第23巻第4号 (2004年12月発行)

日本経済の技術進歩率計測の試み:「修正ソロー残差」は失われた10年について何を語るか?

川本 卓司

 1990年代のわが国では、ソロー残差として計測される全要素生産性(TFP)の成長率は大きく低下した。しかしながら、標準的なソロー残差には技術進歩以外のさまざまな要素が混入していると考えられるため、これをもって1990年代に技術進歩のペースが減速したと考えるのは早計である。本稿では、(1)収穫逓増と不完全競争、(2)資本と労働の稼働率変動、および(3)産業間における生産要素の再配分をコントロールした「修正ソロー残差(purified Solow residual)」を推計することによって、1973~98年にかけての日本経済の「真の」技術進歩率の計測を試みた。その結果、1990年代のわが国で技術進歩率が減速したという証拠はほとんど、あるいは全く見出されなかった。また、稼働率の低下と、規模の経済効果が小さい産業に生産要素が集中的に配分されたことの両者が、技術進歩とは無関係なTFP成長率低下を引き起こしたことがわかった。本稿で得られた結果は、「失われた10年」の原因を技術進歩の停滞に求めるリアル・ビジネス・サイクル理論的な見方に疑問を投げ掛けるものである。

キーワード:生産性、技術、修正ソロー残差


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