金融研究 第23巻第3号 (2004年10月発行)

「デフレの罠」脱却のための金融財政政策のシナリオ

岩本 康志

 本稿は、ゼロ金利でデフレが継続する状態(デフレの罠)から脱却するための金融財政政策のシナリオについて理論的な整理を試みる。必要とされる政策手段は、貨幣ファイナンスされた減税と組み合わせた将来の貨幣成長へのコミットメントと金利の引上げである。必要とされる減税額はインフレ率(名目金利)の上昇による中央銀行納付金の増加額に対応しており、財政当局は政府負債とプライマリー・バランスを安定化させる財政規律を維持する。価格が伸縮的でない場合は、所得の一時的低下が生じるが、これはデフレを解消するために支払わなければならない対価である。
 現状の量的緩和政策へのコミットメントは、自然利子率の低下が一時的に生じていることを前提にしたものである。しかし、現状がデフレの罠であるとしたら、ゼロ金利の継続はデフレ期待と整合的になり、永遠にデフレから脱却できないかもしれない。自然利子率が正値であると判断できる環境になってもデフレが継続するようであれば、デフレの罠での政策シナリオの適用を考えるべきであろう。その意味で、現行の政策スタンスの解除条件については、消費者物価指数の安定的な上昇のみならず実質GDPの動向にも配慮する必要があると考えられる。

キーワード:金融政策、ゼロ金利制約、流動性の罠、デフレの罠、非リカード的財政スタンス


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