近年の非営利法人にかかる会計基準の設定や改訂の動きをみると、民間の営利企業に適用される企業会計の考え方を非営利法人の会計にもとり入れようとする一方で、必要に応じて一定の修正を加えるといった方法がとられている。本稿は、こうした会計基準の設定・改訂の動きがみられる非営利法人のうち、独立行政法人、特殊法人・認可法人、郵政公社、公益法人を取り上げ、それらにかかる各会計基準の特徴やその背景にある考え方を各法人の財務・ガバナンス構造との関係から考察することを通じて、非営利法人にかかる会計処理のあり方を考えるうえでの1つの視点を提供することを目的とするものである。
考察の結果、非営利法人にかかる財務報告のあり方として、次の点を主張している。第1に、資源調達・配分にかかる最終的な意思決定権限を法人以外の主体が有している場合には、それに基づいて生じた損益を当該法人の業績を表す損益計算書上の損益として認識するのは妥当でないと考えられる。第2に、法人の運営資金が国からの財源措置に依存している場合には、行政コスト計算書を作成することが要求される。第3に、非営利法人の業務にかかる責任の所在を明確化し、その自主的・自律的な運営を通じた業務の効率化を図るためには、収支計算書のような予算準拠主義に基づく財務諸表の作成を要求するよりも、セグメント別情報をベースとした業績評価制度を導入するほうが有効である。
キーワード:非営利法人会計、公会計、業績評価、独立行政法人、特殊・認可法人、郵政公社、公益法人
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