金融研究 第23巻第1号  (2004年3月発行)

物価連動債の市場価格より得られる情報:米国財務省物価連動債の評価

北村 行伸

 米国財務省は1997年1月より物価連動債の発行を開始し、2002年9月時点で、10年物および30年物の物価連動債10銘柄が市中で流通し、5年物1銘柄がすでに満期を迎えた。本稿は、これまで5年半の市場取引の実績をもとに、米国物価連動債の枠組みに評価を加え、わが国で同種の国債を発行する場合の参考とすることを目的としている。本稿の結果は次のようにまとめられる。(1)実質イールドは4%前後の水準で比較的安定しており、10年債と30年債を比べると、後者の方がさらに安定している。(2)期待インフレ率は実質イールドよりは実現した消費者物価(CPI)の動きと連動しているが、その変動は小さく安定し、特に30年債は2%前後で安定している。(3)10年債から導かれる経済情報は短期的な経済変動の影響を強く受けているのに対して、30年債から導かれる経済情報は短期的な経済変動にはあまり反応していない。(4)期待インフレ率に有益な情報を持っていると思われる物価連動債は、名目債との裁定が働き、流通市場の流動性も相対的に高い10年物第3回債と10年物第4回債であり、物価連動債発行の条件が、その後の市場取引や期待インフレ率の導出にとって重要であることを示している。

キーワード:物価連動債、期待インフレ率、実質イールド


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