金融研究 第22巻別冊第2号 (2003年11月発行)

日経225オプションデータを使ったGARCHオプション価格付けモデルの検証

渡部敏明

 本稿は、GARCHおよびそれを拡張したモデルを使って日経225オプション価格を計算し、どのモデルが実際のオプション価格の変動をうまく捉えることができるか比較を行ったものである。ボラティリティの定式化には、GARCHモデルに加え、前日に株価が上がったか下がったかによるボラティリティ変動の非対称性を捉えることのできるGJR、EGARCHモデルを用いている。期待収益率の定式化には、投資家の危険中立性を仮定し期待収益率が安全資産の利子率に等しいとするモデルと危険中立性を仮定せず期待収益率がボラティリティや過去の収益率に依存して変動するモデルを用いており、後者のモデルでは、Duan[1995]に従い、局所危険中立評価関係の仮定のもとでオプション価格を導出している。収益率の誤差項の分布には正規分布とt分布を用いている。主な結論は以下のとおりである。(1)危険中立性を仮定せず期待収益率がボラティリティや過去の収益率に依存して変動するモデルを用いてDuan[1995]の方法で計算してもパフォーマンスは上がらない。(2)収益率の誤差項の分布をt分布にしてもパフォーマンスは上がらない。(3)GARCH、GJR、EGARCHモデルの相対的なパフォーマンスはマネネスに依存する。(4)プット・オプションではすべてのGARCH型モデルが、コール・オプションではGJRモデルが、ほとんどすべてのマネネスでブラック=ショールズ・モデルのパフォーマンスを上回る。

キーワード:オプション、危険中立性、局所危険中立評価関係、日経225株価指数、EGARCH、GARCH、GJR、t分布


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