金融研究 第22巻別冊第1号 (2003年6月発行)

株式保有構成と企業価値
─コーポレート・ガバナンスに関する一考察─

西崎健司、倉澤資成

 本稿では、株式保有構成と企業価値の関係について分析することにより、株主によるコーポレート・ガバナンス(企業統治)について経済学的視点から考察を行った。
 具体的には、わが国における株式保有構成の特徴点と中・長期的動向を概観し、理論的には外部の大口株主による株式保有比率上昇は企業価値に対して正負いずれの影響も与え得ることを示したうえで、わが国において外部の大口株主による株式保有比率の上昇や株式保有構成の変化が企業価値に与えた影響について実証分析を行った。
 実証分析の結果、わが国において、(1)外部の大口株主はモニタリング活動等を通じて企業価値に対して正の影響を与えていること、(2)個人の保有比率は企業価値に対して負の影響を与えており、モニタリング活動に関するフリー・ライダー問題の存在が示唆されること、(3)1990年代以降、非金融法人企業による株式持合いが企業価値に負の影響を与えている可能性が高いこと、(4)1990年代にわが国株式市場におけるプレゼンスが著しく拡大した海外部門(外国人投資家)については、投資家・株主として国内投資家に勝るパフォーマンスであったことなどが示された。

キーワード:コーポレート・ガバナンス、企業価値、株式保有構成、トービンのq 、パネル分析


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2003 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム