金融研究 第22巻別冊第1号 (2003年6月発行)

JASDAQ市場のスプレッド比較
─オーダー・ドリブン対マーケット・メイキング─

宇野淳、柴田舞、嶋谷毅、清水季子、万年佐知子

 本稿は、JASDAQ市場で取引されているマーケット・メイク銘柄とオーダー・ドリブン銘柄を対象に、取引システムが価格形成に与える影響を分析する。マーケット・メイク銘柄は、マーケット・メイカーの介在によりいつでも取引が可能であるという特徴を有する反面、投資家が負担する取引コストはオーダー・ドリブン銘柄に比較して高いことがわかった。また、マーケット・メイク銘柄では、市場に提示された最良気配よりもよい価格での約定が、注文3件に1件の割合で生じていたことも確認された。これは、米国のNASDAQやニューヨーク証券取引所(NYSE)でも観察された現象で、顧客からの注文をマーケット・メイカーの気配に反映させる義務がないことなどから生じるパターンと同様のものと考えられる。マーケット・メイカーの行動は、従来のマーケット・メイカー・モデルが想定するような気配提示による競争ではなく、特定顧客との関係を重視する戦略をとっている可能性を示唆するものである。JASDAQは現在、市場制度の見直しを進めているが、参加者に公平な約定機会を与えるという面での改善が図られるかについて、継続的に評価していく必要がある。

キーワード:JASDAQ、マーケット・メイク、オーダー・ドリブン、気配スプレッド、実効スプレッド、取引コスト、リーブ・オーダー、最良気配、価格向上


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