金融研究 第22巻第4号 (2003年12月発行)

コミットメントが期待形成に与える効果:
時間軸効果の実証的検討

翁 邦雄、白塚 重典

 短期金利がほぼゼロにまで低下したとしても、中央銀行は、ゼロ金利を将来にわたって継続する、あるいは短期金利をゼロにまで低下させるよう潤沢な流動性を供給するとのコミットメントによって、さらなる緩和効果を生み出すことができる。この政策行動は、政策コミットメントを使って、将来の金融政策行動に関する期待に働き掛けることを通じ、金利をゼロ以下には引き下げられない制約を乗り越えようとするものである。近年のわが国の金融政策は、上記の、いわゆる時間軸効果に強く依存していることが大きな特徴となっている。本稿では、1998年3月から2003年2月までの月次データを使ってイールド・カーブの動きを分析し、ゼロ金利下での政策コミットメントの有効性と限界を検証する。おもな結論は、時間軸効果は、短期金利の将来経路に関する金融市場の期待を安定化させるうえで、きわめて有効であり、長期金利を低位・安定化させることに寄与してきた。しかしながら分析対象期間内において時間軸効果のみでは、金融市場における低成長とデフレの持続期待を反転させるには至らなかったというものである。

キーワード:ゼロ金利政策、量的緩和、時間軸効果、政策コミットメント、瞬間フォワード・レート・カーブ、拡張ネルソン=シーゲル・モデル


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2003 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム