金融研究 第22巻第3号 (2003年9月発行)

貿易におけるインボイス通貨の決定について:
「円の国際化」へのインプリケーション

大井 博之、大谷 聡、代田 豊一郎

 本稿は、輸出に関するインボイス通貨選択について、期待収益最大化の観点からの理論研究を概観し、それを基に、「円の国際化」の1つの側面である貿易取引における円の利用に関する現状評価と将来展望を行う。本稿の分析からは、現在の輸出決済通貨としての円の利用は、理論的に説明可能な水準と概ね整合的であることが示される。このことは、現在のわが国製造業の対外競争力や市場シェア、現在の為替相場制度を所与のものと考えると、現在わが国で進められている金融市場の整備だけでは、インボイス通貨としての円の利用拡大への影響は限られたものになる可能性が高いことも意味する。さらに、「円の国際化」の観点から、東アジアでの導入が唱えられている通貨バスケット制は、理論的には東アジアにとって必ずしも望ましいとは限らない。また、貿易取引における円の利用拡大は、わが国にとって必ずしもフリーランチではなく、政策当局にとって、政策運営上新たな課題をもたらす可能性もある。

キーワード:インボイス通貨、LCP(local currency pricing)、PCP(producers' currency pricing)、円の国際化、新しい開放マクロ経済学、通貨バスケット制


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