金融研究 第22巻第2号 (2003年6月発行)

わが国の名目賃金は下方硬直的か?(Part I)
─名目賃金変化率の分布の検証─

黒田 祥子、山本 勲

 本稿では、1993~98年のマイクロ・データから算出された名目賃金変化率の分布の形状をさまざまな統計的手法を用いて検討し、わが国の名目賃金の下方硬直性を検証した。
 本稿の定義に従えば、わが国の名目賃金には下方硬直性が存在するが、その度合いは名目賃金のタイプによって異なることがわかった。具体的には、(1)名目賃金変化率の分布にゼロ近傍で突出したスパイクが観察され、しかも分布の右側が左側よりも大きくなっていることから、わが国の名目賃金には下方硬直性が存在すること、(2)賃下げを経験したサンプルがどの程度あるかという基準で判断した名目賃金の下方硬直性の度合いは、名目賃金のタイプによって異なること、(3)パートタイム女性の時給についてはほぼ完全に下方硬直的といえる反面、フルタイム雇用者の男性・女性の所定内月給と年間収入については、全体の4分の1程度のサンプルが賃下げを経験しており、下方硬直性の度合いは限定的であること等を明らかにした。
 さらに、名目賃金変化率の分布の歪みとインフレ率との相関関係を検証したところ、分析対象となったインフレ率は極めて低い範囲に限られるものの、フルタイム男性の所定内月給については、インフレ率が高いほど分布の歪みは解消される傾向があることを示した。

キーワード:名目賃金の下方硬直性、インフレ率、金融政策、賃金格差、マイクロ・データ、名目賃金変化率の分布


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