現在、国際会計士連盟(IFAC)において、政府および政府機関を適用対象とした国際公会計基準(IPSAS)の策定プロジェクトが進められている。IPSASには強制力がないため、各国に対してこれと整合的なかたちでの政府会計基準の策定が要求されるわけではない。しかし、IPSASは、企業会計と政府会計との異同点や公会計にかかる諸外国の潮流を知るうえで有益であり、わが国における政府会計基準のあり方を考えるうえで参考になると思われる。
本稿では、こうした問題意識から、IPSAS策定プロジェクトの概要、現時点におけるIPSASの基本的な考え方や具体的な会計処理の内容につき、整理・検討している。
IPSASには、財務報告の主要な利用者として誰を想定するかを特定していない点や、政府会計基準と政府の経営モデルとの関連づけを明示的に考慮していない点等の問題もあるが、どのような経営モデルを選択するかは各政府の主権に委ねられている点を踏まえると、特定の経営モデルに依拠した単一の国際的な政府会計基準を作成することが必ずしも適切でないのも事実である。このため、IPSASは、各政府が自己の経営モデルとの関係で最適な会計基準のあり方を検討していく際のベンチマーク基準として機能することが期待される。
キーワード:政府会計、IPSAS、IFAC、PSC、国際会計基準
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