金融研究 第21巻別冊第1号 (2002年6月発行)

わが国における労働分配率についての一考察

須合 智広、西崎 健司

 本稿では、1960年代以降における民間法人企業部門の労働分配率の動向について分析した。わが国の労働分配率は40年間にわたって上昇トレンドを持ち、景気循環の過程でこの周りを変動しているようにみえる。本稿では、分配率の趨勢的変動が定常状態への移行動学過程を、短期的な変動が移行動学からの短期的な乖離の調整過程をそれぞれ反映していると想定し、実質賃金と労働の平均生産性の誤差修正モデルを用いた実証分析を行った。得られた結論は、次のとおりである。(1)わが国の労働分配率は、資本深化を反映した労働の平均生産性の上昇とともに上昇する特徴を持つ。これは、労働と資本の代替の弾力性が1より小さいことを反映している。(2)短期的には、分配率は景気循環と逆方向に動く。これは、資本と労働の調整費用の存在等により、労働の平均生産性の順循環的な変動が実質賃金の順循環的変動と比べて大きいという特徴を反映している。(3)第1次石油ショック後の労働分配率の急激な上昇は、中期的な均衡労働分配率の上方シフトを伴うものであったが、1990年代の労働分配率の上昇は、均衡労働分配率の上方シフトを伴うものではなかったことが統計的に確認された。

キーワード:労働分配率、実質賃金、労働の平均生産性、誤差修正モデル、労働と資本の代替の弾力性


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